第18回 英国人の身だしなみ

紳士の国としても知られる英国ですが、身だしなみなどに目を向けると、 現状は過大評価されていると思います。とは言え、流石と思う場面にあうことも あるので、まだ捨てたものではないと感心させられたりするので、あながち 間違いではないのかもしれません。

選挙運動時の政治家

5月の総選挙では与党・保守党が僅差予想を覆して大勝を収めました。 選挙運動中に目についたのは各党首の面立ちでした。保守党党首を務める キャメロン首相が背広の上着を脱いでシャツを腕まくりしていたのに対し、 最大野党・労働党のミリバンド党首はネクタイをきっちりと締めた身なりで 臨みました。エリート層に属する首相が一般庶民に近い感覚を訴えた一方、 ミリバンド党首はどちらかと言えば産業界にアピールしているようでした。 経済が上向きで中流以上の支持を集める首相は、安定を求める庶民層も取り 込んで選挙運動をうまく取り運んだと言えるのではないでしょうか。

政治の世界でも身だしなみが世間の状況を醸し出すわけですが、ここでは 特に英国の男性陣について取り上げてみます。

英国人との比較

英国人とその他の国の男性の着こなし方を比較してみると、3つほど大きな 違いが挙げられます。まず1つは肌着を身に付けるかどうかです。英国男性は 季節を問わず、肌着を着ることはほぼありません。理由はともあれ、これに 慣れてみると流石に見栄えが違います。特にネクタイをしないシチュエーション や上着を脱いだ場合など、肌着が見え隠れしたり、シャツ越しに浮かび出る様相 には興ざめするようです。

2つ目に挙げられるのは、ピシッとしたシャツが好まれることです。最近では アイロン要らずのシャツが多いですが、英国ではきっちりとアイロン掛けされた シャツがまだまだ主流です。パンツもそうですが、体にぴったりとするスタイル が好まれる傾向にあり、輪郭が緩めなものは余り受け入れられていません。

3つ目は輪郭に関係するものですが、スーツやシャツを注文仕立てすることが まだまだ本格派として一目置かれています。それぞれの体格にあったスーツが粋な 着こなし方で、パンツもベルトを付けることなく履けるようになっています。 英国外ではオーダーメードやカスタムメードなどと呼ばれていますが、英国では 「Bespoke(ビースポーク)」という表現なので注意が必要です。

王子らのカジュアルな井出立ち

カジュアルな井出立ちも総じてこの形に沿ったものとなります。英王室の ウィリアム王子やハリー王子のタイト目のシャツの腕まくりし、スリムな ジーンズに革靴という着こなしは極めて代表的なものです。ワンダイレクション などの人気グループのメンバーも似たような着こなしをしていることからも明らか でしょう。新しいブリティッシュトレンドと言えるかもしれません。

こうしていろいろな例を挙げていくと「紳士的」と思えますが、どうしても 1ついただけないものがあります。それはスポーツをする時の着こなしです。 アメリカ人などはこの点においてはかなり先を行っているのではないでしょうか。 どの点かわかりますでしょうか。それは靴下のチョイスです。これに関してはかなり 疎いようで、スニーカーに普通のソックスという組み合わせをよく見かけます。 アメリカ人はこの点はかなり気をつけているとうかがわれます。欲を言えば ショーツの選択もイマイチのような気がします。

また、時機をみて英国女性の着こなしについても取り上げてみたいと思います。 もう6月だというのに夜間には暖房が必要な英国ですが、そのうち夏らしい気候に なることを望みつつ、今回は筆をおくことにいたします。

藤隼人

次回は「ロードトリップ

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注:一部表現など修正しました。