第1回 スポーツも英国の伝統 

初めまして、今回から出たっきり邦人・欧州編に参加させていただくことにな りました英国ロンドンに6年余り滞在している藤隼人です。各国の先輩方がこれまで続けてきた出たっきり邦人の一員として質を高め、また力となれるよう にする心積もりですので、今後ともよろしくお願いします。

もう6月半ばだというのに欧州全体でぐずついた天候が続いています。大陸の河川地方では洪水の被害が出ており、こうした災難に見舞われた方が少ないことを祈るばかりです。

さて、スポーツ好きの人にとって各国のサッカーリーグがほぼ終了した6月になると、関心はテニスなどに移っていきます。春先から始まったクレーを主体とした大会が6月9日の全仏で幕を閉じ、これからはわずか1カ月ですが、芝生で行うローンテニスが主役となります。

下手の横好きというのでしょうか私自身の腕前はそれほどでないにしろ、テニスの主要大会はほぼフォローし、今年は全仏にも初めて行き、あと一息で3回戦まで手の届く内容だったクルム伊達公子選手のダブルス戦など応援してきました。

ロンドンの自宅はウィンブルドンまで車で10分ほどなので、ほぼ地元といっても過言でない全英の会場となるオール・イングランド・ローンテニス・アンド・クロケット・クラブ(AELTC)まで毎年見に行っています。ウィンブルドンのチケットは公募方式の抽選で獲得できるのですが、6年連続で外れています。そのため、敗者復活戦ではありませんが、英国伝統の行列で毎年何とか当日券を確保しようと四苦八苦しています。

この方式は公正と言っていいと思うのですが、時間と暇さえあれば誰でもほぼ確実にセンターコートの券も獲得できます。ウィンブルドンでは毎日5000枚ほどの当日券を販売します。行列は開催日の早朝に売り出されますが、行列自体はその前日から出来始めます。昔は治安上の問題から徹夜は禁止されていたようですが、ここ近年に徹夜が容認されてからこの列が出来るタイミングもだんだん早まっているように見受けられます。大会初日や英国出身のアンディー・マレー選手など人気者がプレーする日には前日の早朝からもう列が出来ていることもあります。

過去3年連続で行列に並びましたが、これまで何とか3年連続で1番コートのチケットを獲得。昨年は選手席のあるコート手前から3列目という幸運でした。ただ、これも実際にチケットを買うまでどの席になるかわからず、各窓口に配布されている印刷済みのチケット次第のため、運としか言いようがありません。

シードが発表されてから見に行く日を決めているのにかかわらず、相性が悪いのかお目当てのロジャー・フェデラー選手の試合とめぐり合うことはなく、毎年の片思いになっています。不思議なもので、ジョコビッチやシャラポワなど人気選手の試合は必ずと言っていいほど観戦する機会を得ています。

全英はテニスだけででなく、英国の伝統を体験する上でも貴重な機会です。ウィンブルドンの風物詩としてクリーム入りのイチゴは有名ですが、大人向けにはピムスというアルコール飲料があります。個人的には余り好きではありませんが、ピムスというジンをベースにしたリキュールにフルーツやハーブを加え、炭酸飲料で割るカクテルで、夏になるとパブなどでも手軽に飲むことが出来ます。もちろん、英国の代表的なフィッシュ・アンド・チップスもウィンブルドンで買い求めることができます。

日本に居た時に見ていたウィンブルドンは雨順延が多かった記憶があるのですが、センターコートに雨対策の屋根が出来てからというもの、ここ数年は天気は何とか持ちこたえています。悪天候続きの今年はどうなるかわかりませんが、今年もきっと熱戦が繰り広げられることでしょう着実に地力を着けてきている錦織選手や、伊達選手の活躍も楽しみです。

ちなみに今年、全仏に初めて訪れたことから、テニス4大大会のうち全米も含めこれまでに3大会に参加。そのうち全豪もと目論んでいます。早くグランドスラム制覇の朗報をお知らせできればいいのですが、こればかりはいつになるのか未定の状態です。

藤隼人

次回は「中欧とは

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